契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、契約の内容に合致しない目的物が提供された場合に、売主が負う責任のことです。
契約不適合の発覚後、買主は売主に対して以下のような請求を行うことができます。
具体的な請求内容については後ほど説明します。
契約不適合責任は、債務不履行責任の一部であり、瑕疵担保責任とは異なるものです。
買主は、目的物の問題を発見した後、1年以内に売主に通知しなければなりません。
売主は、適切な通知を受けた場合には請求に応じて責任を負うことになります。
民法改正のポイント5つ
民法の改正によって以下の5つのポイントが変更されました。
ポイント1:買主の権利 契約不適合責任の下では、買主には以前よりも多くの権利が与えられました。
具体的には以下の権利が認められています。
・損害賠償請求権
・契約解除権
・追完請求権(瑕疵の修正や補償を求める権利など)
・代金減額請求権
・無催告解除権
・催告解除権
ポイントとして特筆すべきは、追完請求権と代金減額請求権です。
売主は販売契約の内容に合致する商品を提供する義務を負うため、買主には修正や補償を求める追完請求権が認められました。
また、欠陥商品の取引においては、解決策として損害賠償や契約解除だけでなく、代金を減額する方が適切な場合もあります。
そのため、代金減額請求権も買主に与えられることとなりました。
さらに、契約不適合責任の改正により、買主には無催告解除権と催告解除権の2つの新しい権利も与えられました。
これにより、買主は先述の権利を行使することができるようになりました。
それぞれの権利の内容については以下で簡単にまとめていますので、ご覧ください。
契約不適合責任における売主の責任基準
目的物が契約の内容に適合しない物件を購入した買主は、売主に対して損害賠償請求をすることができます。
この点は、改正前の瑕疵担保責任と変わりません。
しかし瑕疵担保責任と大きく変わった点は、買主が損害賠償請求するためには、売主の帰責事由を要することです。
以前の瑕疵担保責任では、売主の無過失責任が適用されていました。
つまり、売主に責任がない瑕疵でも、売主は損害賠償義務を負う必要がありました。
しかし契約不適合責任では、売主は自己に責任がない瑕疵については、損害賠償義務を負わないことになっています。
ただし、損害賠償義務以外の義務については、売主は自己に帰責事由がなくても責任を負う必要があります。
なお、買主に帰責事由がある場合は、買主を救済する必要がないため、契約不適合責任を追及することはできません。
契約不適合責任における損害賠償の範囲について
契約不適合責任における損害賠償の範囲は、これまでの瑕疵担保責任とは異なります。
瑕疵担保責任では、損害賠償の範囲は信頼利益に限定されていましたが、契約不適合責任では損害倍書の範囲が広がり、要件を満たす場合は履行利益も含まれることになります。
信頼利益とは、契約が有効であると信じたために生じた損害を指し、履行利益とは契約が完全に履行された場合の利益を意味します。
権利行使の期間制限についても、契約不適合責任と瑕疵担保責任では異なります。
瑕疵担保責任では、買主の権利行使の期間は瑕疵を知った時から1年以内と制限されていましたが、契約不適合責任では、買主が契約に適合していないことを知った時から1年以内に売主に通知する必要があります。
また、権利移転に関する契約不適合に基づく権利行使については、改正民法では期間制限を定めていません。
ただし、権利行使が可能な期間(10年)を経過した場合や、権利行使ができることを知った時点から5年経過した場合は、消滅時効の可能性もあります。
ただし、売主の重過失や悪意による契約不適合の場合、売主への通知期間に制限はなくなるため、1年を経過した後の通知でも有効となります。
通知する内容についても瑕疵担保責任とは異なります。
瑕疵担保責任では、損害賠償請求権を行使する際には請求する損害額の算定根拠を示す必要がありましたが、契約不適合責任では、買主は権利を行使する前提として、物件の不備について売主に通知するだけで十分です。
通知とは、売主が対応を検討できる程度に不適合の種類やおおよその範囲を知らせることです。
契約不適合責任では、物件の補修や不足部分の引き渡しを追求するための追完請求も可能となります。
売主が追完に応じなかった場合は、代金の減額を請求することもできます。
なお、契約不適合責任では、売主に過失がある場合のみ損害賠償責任が生じますが、過失がない場合でも契約解除や代金減額、追完請求には応じなければなりません。
しかし、この場合は売主の帰責事由が必要ではありません。
不動産売買契約の契約書の重要性
契約書には、契約不適合責任に関する具体的な内容が記載されている必要があります。
不動産の売買においては、売主が負う責任が定められていますが、契約の内容が明確でないとトラブルが発生する可能性があります。
不動産売買契約には、目的物の種類、品質、数量などの詳細な内容が合意されている必要があります。
これにより、売主が契約内容を履行しなかった場合、買主は契約不適合責任を主張することができます。
しかし、契約書に詳細すぎる記載があると、契約書自体が煩雑になります。
したがって、契約書には主要な事項に絞って記載することが重要です。
また、売買代金や不動産の所在などの主な事項以外にも、契約書には特約や免責事項が含まれることがあります。
特約とは、契約不適合責任を一部免除する内容であり、これに合意することで売主の責任が制約されることがあります。
ただし、特約は契約書に明示的に記載されている必要があります。
さらに、不動産売買契約における権利の行使期間にも注意が必要です。
買主が契約不適合を知った時点から1年以内に売主へ通知する必要がありますが、実際に権利を行使することは1年以上経過しても可能です。
ただし、通知時に権利を保全することはできますが、通知から5年または10年経過すると、権利の行使ができなくなる消滅時効が発生するため、注意が必要です。
以上のように、不動産売買契約においては、契約書の内容や特約、権利の行使期間について十分に理解しておくことが重要です。
トラブルを避けるためにも、契約書の作成時には専門家の助言を受けることをおすすめします。
契約不適合責任についての具体的な記載内容について
不動産売買契約書には、契約不適合責任についての条項を設け、詳しい内容は別紙に記載される場合があります。
これは、主に売主と買主の双方が契約書をしっかりと読み、その意味を理解することが重要です。
不動産売買契約書には、一般の方には馴染みのない附帯条項も多く含まれています。
売主にとっては、責任を問われる可能性のある内容であれば問題ですし、買主にとっては、自分の権利行使を制限されるような条項がある場合は損をする可能性があります。
さらに、契約書には全てを記載することができない内容について、建物検査結果報告書や設備検査結果報告書、物件状況等説明書、設備説明書などの別紙に詳細が記載されることもあります。
これらの文書にも、丁寧に目を通す必要があります。
契約書や附属書類の記載に反した履行が発覚した場合、契約不適合責任としてトラブルが発生する可能性があるため、売主と買主は売買契約をする前に、契約書や附属書類を自ら読み、疑問点があれば仲介会社に確認することが重要です。
具体的な例を挙げると、不動産売買契約書の契約不適合責任に関する条項は、次のように記載されることがあります。
「第〇条 売主は、買主に対し、本契約の趣旨に従い、土地、建物または設備として通常の品質を有する状態で本物件を引き渡すものとする。
2項 前項にかかわらず、売主による物件状況等説明書の記載例……略……に記載された内容は、本契約の内容に適合するものとする。」
売主の契約不適合責任に関する注意事項
売主は、物件の状況や調査結果について、買主と合意した契約内容と異なる情報を伝えなかった場合、責任を負います。
例えば、雨漏りや給排水管の問題、地盤沈下や土壌汚染の調査内容、浸水状況、境界や越境の問題、近隣の建築計画、騒音や電波障害、耐震診断結果などが該当します。
売主が不適合な情報を伝えなかった場合、売主には帰責事由があるとされ、損害賠償の義務を負うことになります。
ただし、特約によって免責することも可能です。
特約による売主の契約不適合責任の制限
売主にとって、契約不適合責任は重い責任です。
特に古い物件を売却する際には不安が生じることもあるでしょう。
そのような場合、売主と買主間で合意があれば、契約不適合責任を負わないとする特約を設けることも有効です。
ただし、売主が告げなかった事項に関しては引き続き契約不適合責任を負うことになります。
また、売主が宅地建物取引業者であり、買主が一般の方の場合、特約によって契約不適合責任を免責することはできません。
これは、宅地建物取引業法に基づく規制のためです。
ただし、売主が宅地建物取引業者である場合、通知期間を短縮する特約は有効です。
例えば「物件引渡しの日から2年を経過する日までに通知する」という特約は、民法の通知期間の定めである1年以内よりも長い期間となります。
売主が宅地建物取引業者である場合は、特約についてよく理解した上で合意することが重要です。
契約不適合責任における権利行使期間の注意点
契約不適合責任においては、買主は不適合を知った日から1年以内に売主に通知する必要がありますが、その期間内に権利を行使する必要はありません。
ただし、民法の消滅時効に関する規定に従います。
消滅時効の起算点は2つあります。
不動産売買における権利行使について詳しく解説
不動産売買契約において、権利を行使するためには2つの要件があります。
一つ目は「権利を行使できることを知った時(主観的要件)」、二つ目は「権利を行使することができる時(客観的要件)」です。
権利を行使できることを知った時には、買主は5年以内にその権利を行使しなければなりません。
ただし、権利を行使することができる時から10年間、権利を行使しなかった場合には、買主の契約不適合責任による権利は時効によって消滅します。
注意すべきは、通知期間だけでなく、時効期間も忘れずに考慮することです。
以上が権利行使に関する詳しい説明でした。
まとめ
不動産売買契約においては、これらのルールを理解することが重要です。
もし不明な点があれば、不動産会社の担当者に説明を求めることをおすすめします。
また、契約内容に不安を感じた場合には、一つ一つ確認することをためらわずに行ってください。
納得のいく対応と説明をしてくれる不動産会社を選ぶことは、不動産売買を安心して行うための重要なポイントです。
思い切って質問し、自信を持って不動産の売買を行いましょう。