所有しているけれど使っていないマンションは、さまざまな活用方法があります。
売却するか、賃貸に出すか、どちらがいいのか迷っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、それぞれの方法のメリットや注意点などを詳しくご説明しますので、ご参考にしてください。
マンション売却と賃貸、どちらが得?
突然の転勤や親との同居などの理由で、住まいを変えなければならない場合や、離婚や相続により将来的に住まないマンションを所有することになった場合、その処理方法について悩むことがあるかもしれません。
住まないマンションは空き家にしておくよりも、売却や賃貸として活用することで利益を得ることができます。
ただし、「売却と賃貸のどちらが得なのか」という疑問を抱く人も多いのではないでしょうか?ここでは、その疑問を解消するため、マンションを売却する場合や賃貸に出す場合のメリットと注意点、売却の手順や賃貸の手順、売却か賃貸かを選ぶ方法について詳しく説明いたします。
マンション売却のメリットとデメリットは?
まずはマンション売却のメリットとデメリットについてお伝えします。
メリット
売却する場合のメリットを見ていきましょう。
売却して現金が得られる
マンションを売却すると、一度に大量の現金を手に入れることができます。
この現金は、さまざまな用途に活用することができます。
例えば、新しい住まいへの引っ越しや新しい事業のための資金、または残っている住宅ローンの返済などに利用することができます。
一般的に、マンションの売却価格は築年数が経つにつれて下がる傾向があります。
築年数が新しいうちに売却することは、なるべく高く売るためにおすすめされる方法です。
税制優遇が受けられる
マンションを売却して利益が出た場合、その利益には所得税と住民税を合わせた「譲渡所得税」がかかります。
この譲渡所得税は、マンションの所有期間によって異なる税率が適用されます。
また、売却した不動産が居住用だった場合には、税制上の優遇措置が受けられることがあります。
具体的には、売却年の1月1日時点での所有期間によって税率が変動し、居住用不動産の場合には税率の軽減がされることがあります。
維持コストがかからない
マンションを売却することによって、所有者はマンションの維持コストから解放されます。
不動産、例えばマンションを所有しているだけで、定期的に維持コストがかかります。
具体的な維持コストには、固定資産税や都市計画税などの年間費用、管理費や修繕積立金などの毎月の費用が含まれます。
また、賃貸に出す場合は、入居者からの問い合わせへの対応や滞納家賃の催促など、さまざまな労力が必要になるかもしれません。
これらの労力を省くためには、管理業務を管理会社に委託することもできますが、その場合には管理会社への支払いも必要になります。
しかし、マンションを売却することで、これらの費用の支払いの必要性もなくなるのです。
賃貸よりも難易度が低い
マンションの売却は、賃貸にするよりも比較的容易です。
その理由は、売却の場合は引き渡しを行えばそれで終了となるからです。
一方、賃貸にする場合は、長期的に管理しながら利益を出さなければならないため、難しさが生じます。
賃貸物件の運営には、立地条件が非常に重要であり、売却できる物件でも賃貸には適さないものが多く存在します。
デメリット
次に売却する場合のデメリットを見ていきましょう。
売却時期で金額が変わる
マンションや他の不動産の売却時期は、売却金額に非常に大きな影響を与えます。
売却時期を決めるには、現在の経済状況と自分のマンションの状況の両方を考慮することが重要です。
不動産市場の経済状況は常に変動しているので、頻繁に情報をチェックして、マンションを売る最適な時期を見逃さないようにしましょう。
また、マンションの状況についても考慮する必要があります。
マンションの価値は築年数に大きく影響されます。
マンションの価格はゼロになることはありませんが、築年数が20〜25年を超えると、価格が大幅に下落し始めます。
そして、25年以上経過すると、価格はゆっくりと下がっていく傾向にあります。
先ほど述べたように、マンションの状況だけを考えると、できるだけ高く売却するには、早い段階で売る方が良いでしょう。
つまり、適切な売却時期を選ぶためには、経済状況とマンションの状況の両方を考慮する必要があります。
マンションの価値が高いうちに売るためには、経済状況の変動を把握し、マンションの築年数も考慮に入れながら、早めの売却を検討することが重要です。
いつ売れるか分からない
マンションを売り出したからといって、すぐに買い手が見つかって売却できるとは限りません。
一般的に、マンションを売ろうと始めてから実際に買主と契約を結ぶまでには、最低でも3か月かかると言われていますが、物件によってはそれ以上の時間がかかる場合もあります。
特に、売り出し価格が相場よりも高く設定されている場合は、購入希望者が現れるまで時間がかかる傾向があります。
その場合は、不動産会社のスタッフと相談して、価格の調整を行うことも必要になるでしょう。
税金や諸費用がかかる
物件の売買契約が成立した場合、印紙税や登録免許税などの税金、そして仲介業者を介した場合には仲介手数料などの費用が発生します。
具体的には、以下のような費用がかかります。
・印紙税:売買契約書には印紙税を支払う必要があります。
これは、契約書の価格に応じて決まる税金です。
・登録免許税:住宅ローンが残っている物件を売却する場合は、登録免許税も発生します。
これは、住宅ローンの残額に応じて決まる税金で、売却額に加算されます。
・仲介手数料:仲介業者を利用した場合には、仲介手数料も支払わなければなりません。
また、この手数料には消費税も含まれます。
さらに、売却益が出た場合には譲渡所得税の納税も必要です。
したがって、売却時には、上記の諸費用や税金を差し引いた後に手元に残る金額を考慮することが重要です。
さらに、売却時に考慮しなければならない要素もあります。
例えば、もし住宅ローンの残債がある場合は、売却金額で返済するか、足りない場合は自己資金を使って残債を完済する必要があります。
なぜなら、売却時にはローンの残債を完済することが条件とされているからです。
さらに、不動産の引き渡し時には、抵当権(銀行が設定した担保権のこと)を抹消する必要があります。
そのため、もし住宅ローンの残債がある場合は、その金額を考慮に入れて売却計画を立てることが重要です。
マンションを賃貸に出すメリットとデメリット
次にマンションを賃貸に出すメリットとデメリットについてお伝えします。
メリット
賃貸にする場合のメリットを見ていきましょう。
入居者がいれば毎月の家賃収入がある
マンションを賃貸に出すことで、入居者から家賃を受け取ることができます。
この家賃収入は、労働の対価ではなく、”不労所得”と呼ばれる収入です。
入居者が長期間住んでくれれば、安定した不労所得を得ることができるため、マンションを賃貸に出すことの最も大きなメリットと言えます。
では、具体的にどのくらいの不労所得を得ることができるのでしょうか?その計算方法を見てみましょう。
まず、マンションの売却益と賃貸に出した場合の家賃収入とを比較します。
この際、家賃収入がどの程度黒字になるか正確に把握することが重要です。
その把握には、「マンションPER」という方法があります。
マンションPERとは、賃貸に出した場合、マンションの購入価格を何年で回収できるのかを示す数値です。
マンションPERは以下の式で算出します。
マンションPER = マンションの購入価格 ÷ (月額賃料 × 12ヶ月) この計算式で算出した値は、賃貸の収益がマンションの購入価格を上回るまでの年数を示します。
例えば、4000万円のマンションで、年間の賃料収入が200万円だと仮定しましょう。
この場合、マンションPERは20となります。
つまり、20年で投資を回収し、その後は黒字に転じるという状況を示しています。
マンションPERが小さいほど、投資の回収が効率的であり、収益率が高くなります。
したがって、マンションを賃貸に出す際には、PERができるだけ小さく、収益率の高い家賃を設定したいところです。
ただし、相場よりも高い家賃を設定すると、入居希望者が現れず、収入がゼロになる可能性が高まります。
適切な家賃を設定するためには、同様の条件の物件の家賃を確認することが重要です。
費用を経費に計上できる
もしマンションを賃貸に出した場合、マンションの維持にかかる費用は「必要経費」として扱うことができます。
必要経費とは、確定申告で所得から差し引くことができる費用のことです。
具体的には、以下の費用が必要経費として計上できます。
・管理費および修繕積立金:マンションの管理や修繕にかかる費用です。
・ローンの利息:もしアパートローンなどの借り入れがある場合、その利息も必要経費として計上できます。
・賃貸管理会社への管理委託料:賃貸管理会社に支払う管理業務の委託料です。
・固定資産税や都市計画税:マンションの所有者が納める税金です。
・火災保険料や地震保険料:マンションの保険料です。
・税理士への報酬:確定申告のために税理士に支払う報酬です。
・設備交換費:マンションの設備を交換するための費用です。
・入居者募集のために支払う仲介手数料:新しい入居者を募集するための仲介手数料です。
・退去時に貸主が負担した部分の原状回復費用:退去した入居者が残した部屋の状態を元に戻すために貸主が負担した費用です。
・減価償却費:長期間にわたって使用する資産に対して、取得費を耐用年数に分割して費用として計上する会計処理のことを指します。
これらの費用は、マンションを賃貸に出している間に実際に支払ったものであれば、確定申告で申告することができます。
ただし、具体的な計算方法や条件は個別のケースによって異なるため、専門家の助言を受けることが重要です。
将来的に売却もできる
賃貸経営を行った後でも、将来的にまとまった現金が必要になった場合、所有しているマンションを売ることで現金を手に入れることも可能です。
ただし、すぐに売却するのではなく、マンションを資産として保有している間は、自分の都合に合わせて売却することができます。
賃貸経営中のマンションは「収益物件」となります。
そのため、売却時の価格には家賃と利回りが大きく影響します。
一般的に、建物の築年数が経過していても家賃は下がりにくい傾向がありますので、マンションを貸し出しておくことで、価値の低下が抑えられます。
また、マンションには現在入居者がいても売却することができます。
入居者がいる場合は、新しいオーナーに引き継がれることになりますが、引き続き賃貸借契約が有効です。
入居者がいることで、売却後の収益確保も期待できます。
ですので、賃貸経営を行っている場合でも、将来的に現金が必要になった際には、所有しているマンションを売却することができるので、柔軟な資金活用ができると言えます。
ただし、売却時の価格には家賃や利回りが影響するため、適切なタイミングで売却することが重要です。
家が再度必要になった場合は、再び使用できる
もしマンションを売らずに所有し続ける場合、将来的には自分自身が再びそのマンションに住むことができます。
ただし、再度住みたい時に既に入居者がいる場合、その入居者との賃貸借契約を解除しなければなりません。
賃貸契約は簡単には解除できないため、再び住むことが確定している場合には、後ほど説明する「定期借家契約」という形式の賃貸契約を結ぶ必要があります。
一般的には、通常の賃貸契約は「普通借家契約」と呼ばれるものです。
この契約は更新が可能なものであり、一度契約を結んだら簡単に解除することはできません。
もし入居者を強制的に退去させたい場合、貸主は正当な理由に加えて立ち退き料を支払う必要があります。
デメリット
次に賃貸にする場合のデメリットを見ていきましょう。
空室のリスクがある
賃貸において最も大きなリスクは、空室になってしまい、その間は収入が得られないことです。
賃貸物件を運営するためには、常に入居者が必要です。
空室になってしまっても、マンションの管理費や修繕積立金など、毎月の固定費はかかります。
もしも空室になってしまった場合は、専門の不動産会社に相談して、対策を取る必要があります。
例えば、賃料を下げるなどの対応策を検討することもあります。
管理や維持にコストがかかる
マンションを賃貸経営する場合、管理や維持には費用がかかります。
例えば、入居者が退去する際には、クロスやフローリングなどが経年劣化しているため、一部修繕が必要になることがあります。
また、エアコンや給湯器などの設備が古くなったり故障したりした場合、新しいものに交換する必要があります。
さらに、外壁が傷んでいたり剥がれていたりする場合にも修繕が必要となります。
入居者トラブルが発生する可能性もある
入居者には、トラブルの発生が予想されます。
可能なトラブルの例を挙げますと、禁止事項であるペット持ち込みを無視することが挙げられます。
また、ゴミ収集のマナーが悪い場合も問題となります。
さらに、家賃の支払いを滞納するケースも考えられます。
さらに、建物を乱暴に扱うことで、同じマンションに住む近隣住民にも迷惑をかける可能性があります。
このような入居者トラブルは、入居者の選択肢を慎重に行うことである程度回避することができます。
また、家賃の支払い滞納のリスクに備えるために、家賃保証会社を利用する方法もあります。
この会社は、入居者が家賃を滞納した場合に対応し、オーナーのリスクを軽減する役割を果たします。
このような方法を活用することで、オーナーはより安心して賃貸物件を所有することができます。
税制面での優遇が受けられない
賃貸住宅を利用していた後、将来的に売却する場合には、転居から3年以上経過しているかどうかが重要です。
具体的には、12月31日を超えてしまうと、特別控除と呼ばれる利点を利用することができません。
この特別控除は、マイホームを売却する際に適用され、税金の負担を軽減するためのものです。
したがって、特別控除を受けるためには、転居から3年以内に売却手続きを完了させる必要があります。
住宅ローン返済中は賃貸に出せない
住宅ローンの返済中には、通常の場合、融資を受けて購入した物件を賃貸に出すことはできません。
つまり、住宅ローンが残っている場合は、原則的には賃貸という選択肢はないと考えた方が良いです。
なぜなら、住宅ローンは、所有者が自分自身のために住む家を購入するために金融機関から融資を受けることを前提としているからです。
所有者が住まずに、入居者を見つけて家賃収入を得る賃貸物件になる場合、最初の融資目的は変わってしまいます。
マイホームと賃貸物件とでは、政府からの税制優遇措置も異なりますし、金融機関にとっても貸し出し対象が変わってきます。
しかし、どうしても住宅ローンの返済中に自分のマイホームを賃貸にしたい場合は、まず金融機関と交渉してみることをお勧めします。
住宅ローンの対象物件を、自分自身の住まいから投資目的の賃貸物件に変更する場合、住宅ローンを不動産投資ローンに借り換える必要があります。
ただし、金融機関が不動産投資目的の借り換えを認めない可能性もあることを覚悟しておく必要があります。
売却か賃貸か選ぶ方法は?
売買か賃貸かに迷った場合、そのポイントを詳しくお伝えします。
物件の状態から考える
売却向きか賃貸向きかは物件の状態から大体判断するようにします。
売却向きのマンション
マンションを売却する際、専有面積が広い場合は特に需要があります。
賃貸需要は、単身者から2人暮らしの少人数世帯に向けて高まっています。
賃貸物件を探す借主は、手頃な家賃の物件を好みますので、コンパクトな間取りが求められます。
また、築年数の古いマンションも売却向きかもしれません。
なぜなら、売却の場合は設備の交換や内装のリフォームをしなくても売れやすいからです。
しかし、賃貸に出す場合は設備の交換や内装のリフォームをしないと入居者を決めにくくなります。
賃貸向きのマンション
賃貸に適したマンションは、通勤や通学に便利な駅の近くに位置し、建てられてからまだ時間が経っていない新しい築年数の物件です。
築年数が浅いことは、設備も新しく、入居者が引き付けられやすい特徴です。
また、部屋数が多くないコンパクトな間取りは、家賃を抑えることが比較的容易なため、希望する入居者が現れやすい傾向があります。
利回りを計算して判断する
売却するか、賃貸で運用するかを選ぶ際には、物件を賃貸に出した場合の利益を計算して判断する方法があります。
利益を計算するためには、「表面利回り」と「実質利回り」という二つの指標があります。
表面利回りは物件の売り上げの見込みを示し、実質利回りは物件を運用することで得られる利益を示します。
一般的に、理想的な実質利回りは新築物件で3%前後、中古物件で4%~6%を目安にします。
もし、マンションを賃貸に出した場合の実質利回りが3~6%以上を見込めると判断されるならば、賃貸として運用することも検討してみましょう。
将来的に住む可能性があるかを検討する
もしマンションを一時的に住まなくなるけど、数年後にまた住む可能性があるなら、そのマンションを賃貸物件として残すことがおすすめです。
たとえば、転勤で一時的に住む場所を離れる必要がある場合には、一定期間の賃貸契約を考えましょう。
定期借家契約という形で、期間を指定して借り主に貸すことができます。
将来的に自分が戻ってきたいと思うなら、空室にするよりも、一時的に他の人に借りてもらうことで、少なくとも家賃の収入を得ることができます。
また、定期借家契約では、特定の期間が経過すると自動的に契約が終了するため、数年後にまた自分が住むことができます。
選びきれない場合は同時進行も可能
もし売却か賃貸かを決めかねている場合は、両方の手続きを同時に進めることもできます。
例えば、売却のために広告を出しながら、同時に賃貸募集も行うことで、どちらの方法がより有利か比較検討しやすくなるでしょう。
集客状況を見て売却価格と家賃収入を天秤にかけ、最終的に売却するか賃貸するかを決めましょう。
ただし、注意が必要なのは、不動産会社の動機です。
どちらの方法でも、不動産会社は成約時に手数料を受け取ることとなります。
そのため、売却手続きの場合は、賃貸手続きに比べて高額な手数料が発生するため、不動産会社の動機は売却に傾いてしまう可能性があります。
同時に進行する場合は、賃貸の可能性を損なわないように注意しましょう。
まとめ
ここまで、自分が住んでいないもしくは住まなくなったマンションを売却する場合と賃貸に出す場合のそれぞれのメリットと注意点について詳しく説明してきました。
売却するか、賃貸に出すかで迷った場合は、両方のメリットと注意点について十分に理解を深めることが大切です。
しかし、それぞれのメリットや注意点を把握しても、疑問や不安がわいてくることもあるでしょう。
そのような場合は、信頼できる不動産会社に相談してみることをおすすめします。
不動産会社は、物件の調査を通じて査定を行うだけでなく、物件の市場に関する情報も提供してくれることがあります。
そのため、自分自身で売却するか賃貸に出すか迷った場合は、不動産会社に助言を求めることが良いでしょう。
不動産会社からのアドバイスを参考にすることで、納得のいく選択ができる可能性が非常に高くなるでしょう。