中古不動産の売却前に修理をするべき?
中古の不動産を売却する際、売り手は思いもよらない不具合が後から見つかる可能性があります。
この不具合の内容によっては、買い手から損害賠償を請求される可能性もあるため、将来の紛争を避けるためにも、売却前に修理をしておくことが望ましい場合があります。
ここでは、中古不動産の売却前に修理をすることのメリットについて詳しく説明します。
売主の責任 中古不動産の売買では、契約書に「瑕疵担保責任」という項目が必ず含まれます。
瑕疵とは、「売買の目的物が通常の品質や性能を欠いている欠陥や不具合」という意味です。
もし売買後に不動産に瑕疵が見つかった場合、誰がその責任を負うのかは、契約書で事前に定められています。
民法では、買い手が通常の注意を払っていても契約前に気付けなかった「隠れた瑕疵」について、売り手が責任を負うことが定められています。
つまり、売り手がその瑕疵に気付いていたかどうかは関係ありません。
隠れた瑕疵があった時点で、売り手は責任を負わなければなりません。
瑕疵担保責任の期間 瑕疵担保責任の期間は、売り手が個人の場合には民法で特に定められていません。
このため、売主は債権の消滅時効である10年が経過するまで、瑕疵担保責任を負うことになります。
ただし、不動産会社が売却する場合には、2年間が瑕疵担保責任の期間と規定されています。
ただし瑕疵担保責任は任意規定であるため、契約書で期間を異なる内容にすることも可能です。
一般的には、契約後の2〜3ヵ月程度が瑕疵担保責任の期間と定められることが多いですが、重大な瑕疵に関しては、任意期間を超えても売り手が責任を負うことになります。
売主にとっての安心 以上のことから、中古不動産を売却する際には、売り手側が責任を負うことを防ぐために、売却前に修理をすることがベストです。
売主が修理を済ませておけば、将来的に不具合が見つかっても買い手からの損害賠償請求を受ける心配はありません。
売却前の修理により、双方が納得した取引を行うことができ、安心感を持つことができます。
瑕疵担保責任の内容とは
瑕疵担保責任とは、不動産の売買において売主が負う責任のことです。
民法上、売買契約締結後1年間、買い手が隠れた欠陥に気付いた場合、売り手に対して損害賠償を請求することができます。
もし隠れた欠陥が重大である場合、買い手は契約解除を請求し、売買契約を無効にすることもできます。
修理不要な例外的なケース
通常、不動産の売却前には売主が修理をすることが基本ですが、例外的なケースとして、買い手が売買契約時に欠陥を承知している場合は修理を行う必要はありません。
しかし、具体的な不具合内容と買い手がそれを承知していることを、契約書に明記しておくことがおすすめです。
契約書に記載することで、法的に不具合の存在と買い手の承知が保障され、売却後に責任を問われるリスクがなくなります。
民法改正による売主の責任の重さ
2020年4月に改正された民法の改正では、瑕疵担保責任の制度が「契約不適合責任」という名称で生まれ変わりました。
新たな契約不適合責任制度では、売買の目的物が契約内容に合わない場合に、買い手は法的な保護を受けることができるようになります。
つまり、不動産の欠陥や不具合は売り手が責任を負わなければならないということです。
さらに、改正後の契約不適合責任制度では、従来の「隠れた瑕疵」の概念がなくなります。
買い手が通常の注意を払っても気付けなかったということを立証するのは困難です。
したがって、瑕疵が隠れているかどうかではなく、契約した内容との適合性で判断がされるように改正されます。
したがって、契約時に買い手が知らされていなかった欠陥がある場合など、売り手は「契約に適合していない」とされ、損害賠償や契約解除と共に、修理を後から請求されたり、欠陥の分だけ代金が減額される可能性があります。
瑕疵担保責任の対象となる不具合の種類と注意点
瑕疵担保責任(契約不適合責任)の対象となる不具合は様々な種類がありますので、注意が必要です。
一般的に、瑕疵担保責任の対象となる不具合は「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」という3つのタイプがあります。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、不動産に物理的な不具合がある場合を指します。
例えば、雨漏りや地盤沈下などがそれに該当します。
これらの不具合は、買い手が購入後にリフォームや建て替えを行った際に発見されることが多く、売却後数年が経ってからでも責任を追及される場合があります。
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、不動産に関連する心理的に不快な事柄を指します。
例えば、自殺者が出た住宅や孤独死があったマンションの一室などがこれに該当し、一般的には「事故物件」と呼ばれます。
買い手が「契約前にこれらの情報を知っていれば買わなかった」という場合に、瑕疵担保責任の対象となります。
ただし、心理的な不快事項が瑕疵担保責任に該当するかどうかには個人差が大きく、買い手の好みや感受性によって異なるため、契約前には情報の開示が重要です。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、不動産の周辺環境に関連する不具合を指します。
例えば、騒音や異臭などがこれに当たります。
環境的瑕疵は、住み慣れた人には気づきにくいことがありますので、不動産会社や調査機関などの第三者の意見を参考にすることをおすすめします。
また、感じ方や受け止め方は人によって異なるため、契約書で環境的瑕疵を責任の対象外としている場合も多くあります。
その他の注意点
集合住宅(マンションなど)の場合、排水管や外壁などの共有部分も瑕疵担保責任の対象となります。
また、集合住宅では隣人の騒音などが環境的瑕疵になりやすいため、特に注意が必要です。
一軒家や土地の場合では、隣地との境界線が明確でない場合や土地に埋設物がある場合がよく見られます。
特に古い不動産や先祖代々の土地などには、見逃しやすい不具合が存在する場合がありますので、事前に調査を受けることをおすすめします。
まとめ
中古の不動産、特に住宅は年月が経つにつれて劣化していくものです。
売却する際には、ホームインスペクションを受けることを強くおすすめします。
ホームインスペクションとは、住宅診断士などの専門家が行う住宅の調査です。
住宅の劣化状況や欠陥の有無、修繕が必要な箇所、おおよその費用などが、第三者かつ専門家の立場から指摘されます。
調査の内容は業者によって異なりますが、屋根や外壁、室内や床下などの劣化状態の目視による診断や、耐震診断が基本です。
状況によっては、機材を使用した詳細な診断も行われることがあります。
住んでいる人は、欠陥や不具合に慣れてしまっているため、瑕疵だと気づかないこともあります。
ホームインスペクションを受けることで、売却前に修理が必要な箇所が明らかになり、瑕疵担保責任のリスクを軽減することができます。
買い手も売り手も安心して契約するために、ホームインスペクションは非常に有効です。
まとめると、中古不動産を売却する前には、ホームインスペクションを受けて修理を行いましょう。
売却後に不具合が見つかってしまった場合、瑕疵担保責任の下で損害賠償を請求される可能性があります。
不動産の欠陥は、一般の人にはなかなか見つけることができません。
売却前にホームインスペクションを受けて、第三者であり専門家の意見を聞くことで、安心して契約をすることができます。