家を建てるための情報を集めている際、よく「定期借地(定借)」という言葉を目にすることがあります。
定期借地権を持つ住宅は、通常の住宅に比べて購入価格が安価な傾向がありますが、その仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、定期借地権の基本的な仕組みや種類について詳しく説明し、留意すべきポイントについても解説いたします。
定期借地権とは?
「定期借地権」とは、借地借家法によって定められた土地の利用権の一種です。
この権利では、土地を一定期間借りることができます。
定期借地権は一般的に3種類あります。
以前は、借地権ができる前の旧借地権や普通借地権では、土地を一度貸し出すとなかなか所有者の元に戻ってこないという問題がありました。
しかし、定期借地権が導入されたことにより、貸主は安心して土地を貸すことができるようになり、定期借地権付きの物件が増えました。
借り手としても、定期借地権付きの物件では土地の購入代がかからないため、所有権付きの物件よりも低価格で住宅を購入することができます。
これにより、予算に合わせて物件を探す範囲が広がり、理想的な住宅を見つけやすくなるでしょう。
定期借地権の種類
定期借地権は、一定期間にわたって土地を借りる権利を意味し、大切なポイントを押さえておくことが重要です。
定期借地権には3つの種類がありますので、それぞれの違いについて詳しく説明します。
借地権の存続期間が50年以上の「一般定期借地権」
一般定期借地権は、借地権の存続期間が50年以上続く特殊な契約形態です。
この契約では、借地権の期間が満了となると、借り手の権利は消滅し、土地は所有者に返還されます。
契約は更新されず、新たな契約は行われないため、契約満了後は土地を更地にする必要があります。
この一般定期借地権には、用途に制限がないという魅力があります。
借り手が住居用の建物を建てる場合、土地にかかる固定資産税が軽減されることもあります。
つまり、借り手は土地を住宅用途として利用することで、固定資産税の負担が減る利点があります。
また、一般定期借地権は非常に長期にわたる契約形態であり、借り手にとって土地を利用する上での安心感があります。
50年以上の期間を借り手として土地を利用することができるため、借り手は将来的な土地利用計画を立てる際に安定感を持つことができます。
以上のように、一般定期借地権は契約期間が50年以上であり、借り手の権利が契約満了後に消滅する特徴があります。
土地の用途に制限はなく、住居用の建物を建てる場合には固定資産税の軽減があります。
また、長期にわたって土地を借りられるため、借り手にとっては安心して土地を利用することができるでしょう。
借地人から建物を買い取る「建物譲渡特約付借地権」
建物譲渡特約付借地権とは、借地権が30年以上継続する契約のことで、契約は更新されません。
この契約の特徴は、契約期間が満了すると土地の所有者が建物を買い取ることで、借地権が消える点です。
この契約では土地の利用目的に制限はありませんので、借主は契約終了時に建物を買い取ることができるというメリットがあります。
また、土地の所有者にとっても、契約期間終了後は買い取った建物を他の人に貸し出すことで、家賃収入を得ることができるという利点があります。
事業のために土地を賃貸借する「事業用定期借地権」
事業用定期借地権とは、居住目的ではなく事業目的で土地を借りる契約のことです。
主に道路に面した土地で見られることが多く、住宅としては適していない土地でも、事業利用には向いている場合があります。
契約期間は10年以上50年未満であり、契約の更新は行われません。
また、土地の利用目的は住宅以外の事業用物件に制限されており、借地人は土地の所有者に対して建物の買い取りを求めることはできません。
定期借地権のメリット
定期借地権付き建物の選択を検討する際には、そのメリットを把握することが不可欠です。
以下では、特に注目されるポイントを紹介します。
価格が安い
定期借地権付き建物の利点は、他の不動産に比べて値段が安いことです。
土地と建物がセットになっている物件を購入しようとすると、場所によって高すぎて手が出せない場合もあります。
しかし、定期借地権付き建物なら、相場の約6~8割の価格で購入できる可能性もあります。
同じ場所の土地でも、借地権の有無で大きな価格差が生じることを知っておきましょう。
税負担を軽減できる
定期借地権付き建物は、土地を購入せずに建物を所有することができるものです。
この場合、不動産取得税や固定資産税、都市計画税など、土地にまつわる税金の負担を軽減することができます。
例えば、通常の土地と建物を購入した場合、購入時に不動産取得税を支払わなければならず、そして毎年固定資産税や都市計画税を支払う必要があります。
しかし、定期借地権付き建物を選ぶことで、このような土地に関連する税金を支払う必要がなくなりますので、住宅を購入した後も運営コストを抑えることができるのです。
定期借地権のデメリット
定期借地権付き建物というのは、土地の所有権と建物の所有権が別々に存在するものを指します。
このような形態を取ることには、いくつかのメリットがありますが同時にデメリットも存在します。
ここでは、定期借地権付き建物において注意すべきポイントについて詳しく説明していきます。
地代を支払う必要がある
定期借地権付き建物の欠点は、最初に考えられるのは毎月の地代の支払いです。
自分の家を手に入れたのに、地代を毎月支払わなければならないという点には抵抗を感じることもあるでしょう。
一方で、前述のように、土地に関連する税金を支払う必要がないというメリットもあります。
総合的なコストや得られる利益を考慮して契約を検討すれば、必ずしもデメリットとは言えません。
金融機関からの融資を受けづらい
定期借地権付き建物は、銀行からの融資を受けにくいという特徴があります。
このような理由の一つは、定期借地権付き建物の所有者は土地を所有しているわけではないため、担保の評価が低くなるからです。
その結果、希望する金額の融資を受けることができない場合もあるかもしれません。
しかし、定期借地権付き建物には一長一短があります。
その一つは、購入予算を抑えることができるという点です。
定期借地権付き建物は、土地を所有する必要がなく、建物のみを購入することができます。
そのため、購入価格を低く抑えることができ、融資額が多くなくても問題ありません。
ですが、定期借地権付き建物を購入する前には、資金計画をしっかりと立てておくことが重要です。
必要となる融資額を事前に把握し、それに合わせて計画を立てることで、スムーズに購入を進めることができます。
ですので、十分な準備をしてから融資を申し込むようにしましょう。
リフォーム時に地主の許可が必要
建物の増築や大規模なリフォームをする場合、多くの場合は地主の許可が必要です。
工事の規模によっては、地主に承諾料などの支払いも求められることがありますので、事前に相談することが重要です。
また、定期借地権の契約期間が終了すると、建物を解体し、地主に土地を返却する必要があります。
この際に発生する費用も考慮しておくことが大切です。
定期借地権付き住宅に向いている人、向いていない人
定期借地権付き住宅の特徴を考えると、土地の所有権を持つことができず、一定期間利用することになります。
そのため、土地の所有にこだわりがない人にとって最適です。
例えば、「私は子どもがいないし、相続する人もいないので、土地の所有はあまり重要ではない」と思っている人や、「子どもが独立したら、今よりも小さな家に引っ越したい」と考えている人にとっては、一定期間利用した後に契約が終了する定期借地権付き住宅がぴったりです。
一方、「私は子どもに土地を相続させたい」と思っている人や、「二世帯住宅を建てたい」と考えている人にとっては、定期借地権付き住宅はあまり適していません。
なぜなら、定期借地権付き住宅では土地の所有権がないため、相続や二世帯住宅の構築に制約が生じるからです。
ですので、これらの目的や希望を持っている方には、土地の所有権を持つ一括購入の住宅が適していると言えます。
定期借地権の費用
定期借地権付き住宅に住む場合、毎月地代を支払う必要があります。
地代の一般的な目安は、固定資産税評価額の5〜8%程度ですが、個々のケースによって異なることもあります。
地代は通常、土地の価格に基づいて決められますので、土地の価格が上がると地代も上がる可能性があります。
定期借地権の相場は、地域や個別の条件によって異なります。
また、契約する際には通常、土地価格の約20%を保証金として支払うことがありますが、問題がない場合は契約期間終了時に返還されることもあります。
まとめ
定期借地権とは、借地借家法によって定められた権利です。
この権利を持つことにより、一定期間限定で土地を借りることができます。
定期借地権には、3つの種類があります。
それぞれの種類によって、権利の存続期間や契約終了後の対応が異なります。
定期借地権を持つことには、いくつかのメリットがあります。
例えば、住宅を購入する際の予算を抑えることができたり、土地に関する税金の負担がないといった点です。
一方で、デメリットも存在します。
定期借地権を持つ場合、毎月地代を支払う必要があったり、融資を受ける際に制約があること、そしてリフォームをする際には地主の許可を得る必要があることなどが挙げられます。
定期借地権を持つ場合、支払う地代の目安は、固定資産税評価額の5〜8%程度とされています。